あぁ、すごい物をまた観てしまった。
いつもみたいな海外映画じゃない。国産物。
まあ、邦画はよっぽどのことがないと、「「バカ映画道」からは除外が前提」なのだけど(理由は秘密)、今回はどうしても賞賛したいと思った。
監督は、林海象。日本映画の裏歴史に残る、間違いない偉大な監督。ステーキをワサビで食べると美味しいって編み出した人くらい偉大だ。
林監督の最大の特徴は、脳内でロマンが暴走してしまうあまり、現状が見えなくなること」だ。
例えば、どう観てもヘボヘボの張りぼてを来た変身ヒーローの悪役みたいなものでも、林EYEには格好よく見えているらしい。
幸い、キャッチング能力を働かせれば、大地を埋め尽くす刺客の群れ、象を引き連れた異形のサーカス団の行進、古代の衣装に身を包んで優雅に滑空しながら黄金の剣を振るう神などが見える。
だが、もし途中で林電波をキャッチし損ねた場合、そこに見えるのは、かき集められたエキストラのみなさん、シワのよったぬいぐるみを運ぶチンドン屋、そして、台車に乗せられてスライドする。強張った平幹・・・・・・。
そんな影絵劇作家のような、視聴者の想像力を鍛え上げる映像作家、林海象がまたやってくれた。しかも、今回はテレビだ。
TBSの、二時間特番。いやあ、出世したなあ。カイゾウ。借金して、映画作っては借金が膨らんでいってたお前が。
タイトルは、「タイム・リミット」。ついうっかり途中から見始めてしまったのだが(すまん、カイゾウ)、おおよそのシチュエーションは、番宣で把握していた。
義賊のような火薬のエキスパート竹之内が、かつて爆弾で右手を不自由にした、真面目一筋の老刑事緒方と一緒に、爆弾を仕掛けられた横浜のビルに向かう話だそうだ。
ちなみに、ビルには、人質として、ワーカホリックな父に愛想をつかした妻と娘がいるそうだ。いわゆるダイハードシチュエーションだな。
と、言う事はアレか、腰の入ったボディアッパーを武器に、ビルの入り口から緒方が侵入し、各階に待ち構えるボスキャラを倒しながら登っていく話か?
BOMBボタンを押すと、竹之内が爆弾で画面の敵キャラを全滅させてくれる。みたいな。
そんなことを思いながら観た。まあ、実際には思わないが。
ぼくが見た時、画面には京野琴美扮する緒方の娘が、火野正平とケンカしていた。
入り口のドアにしかけられたせいで出られない人質達が精神的に追い詰められ、議員かなにかの役の火野が切れる、というシーンらしい。
「誰か、5000万だすからここからだしてくれ!」
騒ぐ火野。それに対して、切れる琴美。
「じゃあ、あたしが開けるわよ」
爆弾の仕掛けられたのぶに向かう琴美。高まる緊迫感。
「やめろ! 全員の命を危険にさらすつもりか!」
取り付く正平。なるほど、こういう奴がエイリアンを生きたままつれて帰ろうとしてみんなに迷惑かけた挙句食われるんだ。
次のシーンは緒方と竹之内の言い合いだ。どうやら、犯人だと疑っている緒方に対して、竹之内が反発しているシーンらしい。
そこに、竹之内を狙うスナイパーが登場。なんだかものすごい至近距離から、しかも、木の上から狙撃。ギャー、目立ちまくってる!!
それをかばって打たれる緒方。 スナイパー、それを観て不敵に言う。
「ふん、簡単には殺さん」
えーーーー、負けず嫌いーーーーーー?
緒方が目覚めた時、そこは竹之内の火薬工場。なんやかんや言い合った挙句、竹之内が突然窪塚風逆切れ演技で語り始める。
「オレは火薬で人を傷つけるのが大嫌いなんだ!」
そして協力を決意。人質の琴美の携帯に電話をし、爆弾の形状を聞く。解除の参考にしたい。
らしい。って、写メールとかないの?
いや、そもそも、犯人はどうも、見張りとかいないらしい。爆弾だけドアにセットしてどっか行っちゃったみたいなのだ。えーーーーー?
話を聞いているうちに、さっきのスナイパーが襲撃してきた。手にはジャングルナイフを持ち、迷彩のミリタリー装備で、室内戦なのに、顔には黒いメイクが施してある! フル装備にもほどがある!!
犯人は電線を切り、照明を使えないようにしているにも関わらず、そこは花火工場。ナイアガラ花火で明かりをつけられ、緒方に先手を打たれてしまう。カイゾウ、引火って知ってるかい?
アクションの末、ハイキックをくらって倒される緒方。
そこに竹之内登場。さっそうとロケット花火で攻撃する。火薬で人を傷つけるの・・・・・・ほんとに嫌い? そして、引火って知ってる?
なんやかんやのボテボテしたアクションの結果、竹之内がナイフであわや刺されそうになる。その犯人の背中を貫く銃弾! 緒方だ。
竹之内「すげえな、あんた」
緒方「人を殺して、すごいことなんかない」
って、オイオイ、はじめからあんたが銃で威嚇してれば、殺さないですんだところだろう!! 無言で背後から射殺した必然性は、まったく分からない。
犯人を射殺したことを報告したらしく、パトカー到着。そして、竹之内がタイホされてしまう。理由は?
その理不尽に憤激する緒方。御茶の間で見ている皆さんも、きっと同じ怒りでいっぱいだ。このひどいシナリオに。
緒方は警察のやり方にとうとうブチ切れ、竹之内を逃がし、パトカーでビルへとつれて行く。2人で爆弾を解除するのだ。
ビルへの侵入を阻む警官隊に発砲して道を拓く緒方。そして、爆弾のしかけられたドアへとたどり着く。
と、同時にあっけなく解除。人質、無事脱出。
って、あのさ、爆弾処理班って知ってる? カイゾウ?
しかし、中に入ると、さらなるピンチが。金属球を利用して、バランスを崩すと通電によって起爆するように仕掛けられた第二の爆弾を、京野琴美が抱えていた。
人が抱えてて爆発しない爆弾! じゃあ置いても大丈夫だよ!
早速解除し、起爆装置をはずす竹之内。すげー余裕だ。あぁ、もしこのニッポンに、爆弾処理班さえあればこんなことには。
しかし、解除した爆弾にはさらに、時限装置がしかけられていた。その解除に苦労する竹之内。見守る琴美。民間人は避難しろ。
だが、その爆弾にはさらにしかけがあった。時限装置を解除すると、第二の装置が働いて、残り時間二分で爆発するしかけらしい。
「くそ!」
それを手に、走り出す竹之内。どうやら別に、持っても爆発しないタイプだったらしい。はじめから捨ちゃえよそんなもん!
そして竹之内は海の上の橋に来て、なぜかそれを抱きしめて海に飛び込む。豊ちゃん、ポイしなさいポイ!!
結果、竹之内、爆死。
エピローグ、どうやら数ヶ月たったらしい。緒方拳が、交通誘導のバイトをしている。警官隊の包囲に実銃を抜いて潜入したんだから、多分懲役は受けているだろう。何年後だろうか?
そして、どうやら娘の結婚式の前日らしい。そんな日の深夜にまで働いているとは、やっぱり損害倍賞や罰金に追われてるのだろうか?
そんな彼の、携帯が鳴る。出てみると、死んだはずの竹之内だ。「明日、娘さんの結婚式なんだってな。俺からのプレゼントだ」
そして、夜空に大輪の花火が咲き誇る。
きっと彼の霊が、このために帰って来たのだろう。あの花火も、きっと人魂にちがいない。
カイゾウ、お盆だな。
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